是非こんな方に読んでほしい
この論文は、凍結肩(フローズンショルダー)の病態生理や治療法に関心のある整形外科医、理学療法士、および肩関節疾患の治療に携わる医療専門家に有用です。特に、筋の防御性収縮が肩関節の可動域制限にどの程度寄与しているかを理解したいと考えている方に役立ちます。
論文内の肯定的な意見
- 筋の防御性収縮が凍結肩の可動域制限に大きく関与している可能性がある。
- 筋の防御性収縮が関与している場合、一般的な関節包の収縮だけでは説明できない可動域の改善が見られる。
- 筋の防御性収縮を減少させる介入が治療に役立つ可能性が示唆された。
論文内の否定的な意見
- 全ての患者において筋の防御性収縮が可動域制限の原因となっているわけではない。
- 対象患者数が少なく、結果の一般化には限界がある。
Background
凍結肩は、肩関節の痛みと可動域の著しい制限を引き起こす疾患であり、その病態生理は完全には解明されていません。従来の治療は関節包の収縮・線維化に注目してきましたが、筋の防御性収縮(筋の過剰な収縮)が可動域制限の主な原因となっている可能性もあります。本研究の目的は、筋の防御性収縮が凍結肩患者の可動域制限にどの程度関与しているかを検討することです。
Method
凍結肩の診断を受け、関節包リリース手術が予定されている患者5名を対象に、全身麻酔前後の肩関節の受動的可動域(ROM)を比較しました。麻酔により痛みと筋収縮の影響が除去された状態で、肩関節の外転および外旋のROMを測定しました。
Results
麻酔後、全ての参加者で肩関節の外転ROMが著しく増加しました。増加幅は約53°から111°で、可動域が60%から223%向上しました。3名の患者では外旋ROMも大幅に改善し、麻酔前と比べて15°から41°の増加が見られました。一方で、1名の患者では外旋ROMの改善がほとんど見られず、筋の防御性収縮だけでなく、関節包の収縮・線維化が主な原因である可能性が示唆されました。
Conculusion
本研究の結果は、凍結肩患者の可動域制限に筋の防御性収縮が大きく関与している可能性を示唆しています。従来の治療では、関節包の収縮・線維化が原因と考えられていましたが、一部の患者では筋の防御性収縮が主要な要因となっていることが確認されました。この結果は、凍結肩の診断および治療において、関節包の収縮・線維化だけでなく筋の防御性収縮にも焦点を当てるべきであることを示しています。しかし、少数の患者に基づく研究であるため、さらなる研究が必要です。
限界点
- 参加者が5名と少なく、結果を一般化するにはさらなる研究が必要。
- 測定された外転ROMが肩甲骨の動きの影響を受けている可能性があり、正確に肩関節のみの可動域を反映していない可能性がある。
読者が得られるポイント
- 筋の防御性収縮が凍結肩患者の可動域制限に大きく寄与している可能性がある。
- 筋の防御性収縮をターゲットとした治療法の開発が、凍結肩治療において有望である。
- 関節包の収縮・線維化と筋の防御性収縮を区別して治療法を選択する必要がある。
論文の詳細が気になる方、もっと詳しく知りたい方は、是非論文を一読ください。
論文情報
Hollmann L, Halaki M, Kamper SJ, Haber M, Ginn KA. Does muscle guarding play a role in range of motion loss in patients with frozen shoulder? Musculoskeletal Science and Practice. 2018;38:67-72. DOI: 10.1016/j.msksp.2018.07.001.
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