(#24)凍結肩の治療アプローチ比較~管理放置 vs. 集中的理学療法の2年間の追跡研究~

ストレッチング
(#24)凍結肩の治療アプローチ比較~管理放置 vs. 集中的理学療法の2年間の追跡研究~
凍結肩に苦しむ患者、その治療に携わる医師や理学療法士、リハビリテーションの専門家。また、肩関節障害の治療方法に関心があり、最適な治療アプローチを模索している方々にとって有用です。

 

博士

是非こんな方に読んでほしい

凍結肩に苦しむ患者、その治療に携わる医師や理学療法士、リハビリテーションの専門家。また、肩関節障害の治療方法に関心があり、最適な治療アプローチを模索している方々にとって有用です。

 

論文内の肯定的な意見
  • 管理放置(supervised neglect)によるアプローチは、凍結肩の自然な回復を促進し、最終的に高い機能回復を得られることが示された。
  • 集中的な理学療法よりも、管理放置の方が患者の痛みを抑え、より早期に機能回復を達成できる場合がある。

 

論文内の否定的な意見
  • 集中的な理学療法では、痛みが持続しやすく、機能回復に時間がかかる場合がある。
  • 管理放置は全ての患者に適しているわけではなく、個別の状況に応じた治療が必要である。

 

論文の要約

Background

凍結肩は、肩の可動域制限と痛みを特徴とする疾患であり、日常生活に大きな影響を与えることが知られています。凍結肩に対する従来の治療には、理学療法、ストレッチング、手術、麻酔下での操作療法などがありますが、その最適な治療法は明確ではありません。本研究では、凍結肩患者に対して「管理放置(supervised neglect)」と「集中的理学療法」を比較し、それぞれの治療効果を2年間にわたり追跡しました。

 

【過去の報告】
– 凍結肩は自然に治癒する傾向があることが示唆されました(Reeves B.,1975)。
– 痛みを伴わない範囲での軽度の運動が凍結肩の治療に有効であることを示しました(Stenvers JD.,1994)。
– 理学療法を用いた肩関節の再建手術後の機能評価法を確立しました(Fabis J et al.,1997)。

 

Method

本研究は1997年から2001年にかけて、77人の特発性凍結肩患者を対象に実施されました。診断はLundbergの定義に基づき、3ヶ月以上の期間、全方向の肩甲上腕関節の50%以上の運動制限を認めるものとしました。同側の肩または腕に重大な損傷を受けた患者、過去2年以内に肩、腕、頸椎、胸部、乳房に外科的処置を受けた患者、関節内変形、変性関節炎、炎症性関節炎を持つ患者は含まれていません。糖尿病患者は、糖尿病患者における本疾患の自然経過が異なるため、除外。
患者は「管理放置」群(45人)と「集中的理学療法」群(32人)にランダムに割り当てられました。「管理放置」群は痛みの閾値を超えない範囲での運動療法を受け、「集中的理学療法」群は痛みを超える範囲での積極的なストレッチングと手技療法を行いました。全患者に対して24か月間追跡し、6か月ごとに機能評価を行いました。

 

管理放置群(Supervised Neglect Group)
【人数】
45人(男性19人、女性26人)

【治療内容】
・痛みを伴わない範囲での軽い運動(ペンデュラム運動や痛みを伴わない範囲でのアクティブエクササイズ)を推奨。
・患者には、痛みの閾値を超えないように運動を指導され、無理のない範囲で日常生活を再開するよう指示。
・このグループでは積極的なストレッチや関節モビライゼーションは行わず、自然な回復を待つ方針を採用。24か月間の追跡期間中に、患者は定期的に経過観察されました。
集中的理学療法群(Intensive Physical Therapy Group)
【人数】
32人(男性11人、女性21人)
【治療内容】
・集中的な理学療法プログラムが実施され、痛みの閾値を超える積極的なストレッチや関節モビライゼーションが行われました。
・受動的な関節モビライゼーション、手技療法、ホームエクササイズが含まれ、関節の可動域を最大限に引き出すような治療が行われました。
・このグループでは、痛みを伴うが関節の可動域を広げることを目標とした積極的な介入が行われました。

両グループとも、治療期間は24か月間であり、6か月ごとに経過観察が行われました。

 

Results

2年の追跡調査の結果、「管理放置(監視された無視)」群の89%が、痛みのないほぼ正常な肩の機能を取り戻しました(Constantスコア80以上)。一方で「集中的理学療法(ストレッチ)」群では、63%が24か月後に同様のスコアを達成しました。特に「管理放置」群の64%は、12か月以内に回復を見せており、集中的理学療法よりも早期の機能回復が認められました。

 

Conculusion

凍結肩の自然経過は良好であり、「管理放置」による治療は多くの患者に対して効果的であることが示されました。一方、集中的な理学療法は、痛みを伴うストレッチが回復に負の影響を与える可能性があるため、慎重に適用すべきです。本研究は、凍結肩の治療において、無理なストレッチよりも管理放置の方が良好な結果をもたらすことが多いことを強調しています。患者の回復を最適化するためには、過度の介入を避け、身体が自然に治癒するのを促すアプローチが重要です。

 

博士

限界点

  • 凍結肩の自然経過を考慮した場合、治療のタイミングや期間に関するさらなる研究が必要。
  • 集中的理学療法が特定の患者に有益である可能性が否定されておらず、個々の状況に合わせた治療が求められる。
  • 追跡期間が2年に限られているため、長期的な効果については不明。

 

博士

読者が得られるポイント

  • 凍結肩治療における「管理放置」の有効性。
  • 集中的理学療法のリスクと限界。
  • 自然治癒を促進する治療アプローチの可能性。

 

ブログの要約には間違いや個人的な解釈が含まれる可能性があります。
論文の詳細が気になる方、もっと詳しく知りたい方は、是非論文を一読ください。

論文情報
Diercks RL, Stevens M. Gentle thawing of the frozen shoulder: A prospective study of supervised neglect versus intensive physical therapy in seventy-seven patients with frozen shoulder syndrome followed up for two years. J Shoulder Elbow Surg. 2004;13:499-502.
DOI: 10.1016/j.jse.2004.03.002.

引用論文
Reeves B. The natural history of the frozen shoulder syndrome. Scand J Rheumatol. 1975;4:193-6.

Stenvers JD. De primaire frozen shoulder. Groningen: de Tijdstroom. 1994.

Fabis J, Zwierzchowski H. Constant point evaluation for reconstruction of the rotator cuff [in Polish]. Chir Narzadow Ruchu Ortop Pol. 1997;62:491-6.

Lundberg J. The frozen shoulder. Clinical and radiographical observations. The effect of manipulation under general anesthesia. Structure and glycosaminoglycan content of the joint capsule. Local bone metabolism. Acta Orthop Scand(Suppl 119):1-59, 1969.

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