是非こんな方に読んでほしい
凍結肩(フローズンショルダー)の治療に関わる医療従事者、理学療法士、整形外科医。また、肩の痛みと可動域に関する理解を深めたい方や、凍結肩におけるリハビリテーションや治療の効果を評価したい方に有用な内容です。
- 麻酔を用いた肩の可動域(ROM)の変化が明確に示され、痛みと筋収縮が可動域制限に与える影響を評価できる。
- 麻酔後の可動域の改善に基づくリハビリテーションの導入が、効果的である可能性を示唆している。
- 麻酔を使用しない場合、痛みによる可動域の評価が困難であり、臨床現場でのROM測定の標準化が難しい。
- 本研究は麻酔を使用した比較的短期的な評価に限られており、長期的な効果や予後に関するデータは不足している。
Background
凍結肩(フローズンショルダー)は、肩の痛みと可動域制限を特徴とする筋骨格疾患であり、発症率は3〜5%と報告されています。主な原因は、肩関節包周囲の滑膜炎と線維化で、多方向にわたる可動域の制限が見られます。凍結肩の診断や治療においては、痛みの評価とROMの評価が重要ですが、痛みや筋収縮により正確なROMの測定が難しい場合があります。本研究では、麻酔を使用して肩のROMを測定し、痛みや筋収縮が可動域に与える影響を調査しました。
– 全身麻酔下で肩の可動域が著しく改善したことを報告(Hollmann L et al.,2018)。
– 凍結肩におけるROMと肩関節の構造的要因との関連を調査しましたが、痛みとの関連性は見出せませんでした(De Baets L et al.,2020)。
Method
本研究は、54人の凍結肩患者(男性17人、女性37人、平均年齢55.6歳)を対象に実施されました。平均罹患期間は6.6ヶ月でした。凍結肩の診断基準は、患側の肩関節外旋(ER)の可動域が健側の50%未満であることとしました。外傷、手術歴、炎症性疾患を持つ患者は除外されました。全患者は、超音波ガイド下での頚神経根ブロックを受け、麻酔効果を確認した後、麻酔前後のROM(前方屈曲、外転、外旋)を測定しました。
本研究における頸神経根ブロックは、C5およびC6神経根をターゲットとしています。超音波ガイド下で、この部位に局所麻酔薬(ロピバカイン、1%リドカイン、正常生理食塩水の合計10mLずつ)を注射し、肩関節周辺の痛みと筋収縮を抑えるためのブロックを行いました。これにより、麻酔後に肩の可動域(ROM)が改善されるかどうかを評価しました
Results
麻酔後のROMは、麻酔前よりも前方屈曲で21.8度、外転で29.7度、外旋で12.1度向上しました(すべてP < .001)。また、痛みの強さとROMの変化(DROM)には有意な相関が見られ、特に夜間の痛みが強いほど、麻酔後のROMの改善が大きいことが示されました。さらに、罹患期間が長いほど外旋のROM改善が小さいことがわかりました。
夜間時痛は、麻酔前後のROM変化(DROM)と有意に相関していることが示されています。特に、夜間の痛みが強い患者ほど、麻酔後の前方屈曲(FF)、外転(AD)、外旋(ER)の可動域が大きく改善されることが確認されました。具体的には、以下のような相関が見られました。
・前方屈曲(FF):r = 0.51, P < .001
・外転(AD):r = 0.45, P < .001
・外旋(ER):r = 0.39, P = .004これにより、夜間の痛みが強いほど、筋収縮や痛みによる可動域制限が顕著であり、麻酔後のROMの改善幅が大きくなることが示唆されています
限界点
- 本研究は麻酔による短期的な可動域の変化に焦点を当てており、長期的な効果については不明。
- 痛みとROMに影響を与える他の要因(心理的要因や関節の構造的変化)については調査されていない。
- 麻酔なしでの正確なROM測定の難しさが残る。
読者が得られるポイント
- 麻酔後の可動域評価に基づく治療計画の有用性。
- 痛みが可動域制限に与える影響の理解。
- 凍結肩の罹患期間に基づいた治療アプローチの重要性。
論文の詳細が気になる方、もっと詳しく知りたい方は、是非論文を一読ください。
論文情報
Kurashina W, Sasanuma H, Iijima Y, et al. Relationship between pain and range of motion in frozen shoulder. JSES International. 2023;7:774-779.
DOI: 10.1016/j.jseint.2023.05.014.引用論文
Hollmann L, Halaki M, Kamper SJ, Haber M, Ginn KA. Does muscle guarding play a role in range of motion loss in patients with frozen shoulder? Musculoskelet Sci Pract. 2018;37:64-8.
DOI: 10.1016/j.msksp.2018.07.001.
De Baets L, Matheve T, Dierickx C, et al. Are clinical outcomes of frozen shoulder linked to pain, structural factors or pain-related cognitions? Musculoskelet Sci Pract. 2020;50:102270.
DOI: 10.1016/j.msksp.2020.102270.
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