是非こんな方に読んでほしい
整形外科医、理学療法士、スポーツ医学の専門家、肩関節や頸椎に関する疾患や痛みに対応している医療従事者。また、肩や頸部の痛みの原因を的確に診断し、適切な治療法を見つけたいと考えている方々に有用です。
- 本レビューは、頸椎、肩甲骨、回旋筋腱板に関するさまざまな身体検査テストの有効性を、感度や特異度といった具体的な数値とともに詳述しており、診断精度の向上に役立つ。
- それぞれのテストがどのように実施され、どのような状況で使用するのが最適かが明確に示されており、臨床医がより正確な診断を行えるようになっている。
- 一部の検査は感度や特異度が低く、単独では診断に十分な精度を提供できない場合があるため、複数のテストを組み合わせて診断を行う必要がある。
- 肩甲骨機能障害や回旋筋腱板病変に関しては、信頼性の高いテストが少なく、さらなる研究が必要である。
Background
肩や頸椎に関連する痛みや機能障害の診断には、詳細な身体検査が不可欠です。特に、肩関節の動きや筋力を評価するための多くの検査が提案されていますが、それぞれのテストの診断精度には差があることが知られています。本レビューは、頸椎、肩甲骨、回旋筋腱板に関連するテストをまとめ、その有効性を評価し、診断精度を向上させるための方法を検討しています。
– 頸椎神経根症に関連するテストの感度と特異度を調査し、特にSpurlingテストの有用性を指摘しました(Wainner RS et al.,2003)。
– 回旋筋腱板病変の臨床診断におけるテストの精度を体系的にレビューし、多くのテストが単独では十分な診断精度を持たないことを指摘しました(Hughes PC et al.,2008)。
Method
本レビューでは、以下の3つのカテゴリーに分けてテストを分析しています。
1. 頸椎:頸椎神経根症や頸椎の障害を評価するテスト(例:Spurlingテスト、肩甲帯リフトテスト、Valsalvaテストなど)。
2. 肩甲骨:肩甲骨の動きや安定性に関連するテスト(例:Kibler評価、肩甲骨のリトラクションテスト、肩甲骨補助テストなど)。
3. 回旋筋腱板および肩関節障害:回旋筋腱板や肩関節の病変を評価するためのテスト(例:Neerサイン、Hawkinsテスト、Jobeテスト、落下腕テストなど)。
これらのテストは、感度、特異度、陽性・陰性の尤度比を基に評価され、それぞれのテストの有効性を判断しました。
Results
- 頸椎のテストでは、Spurlingテストや肩甲帯リフトテストが特に特異度が高く、頸椎神経根症の診断に有用でした。
- 肩甲骨機能障害に関連するテストの信頼性は低く、特にKibler評価の感度や特異度は中程度であり、単独では診断が難しいとされています。
- 回旋筋腱板に関連するテストでは、NeerサインやHawkinsテストが高い感度を示しましたが、特異度が低いため、他のテストと組み合わせることが推奨されています。
Conculusion
本レビューは、頸椎、肩甲骨、回旋筋腱板の評価において、複数のテストを組み合わせることで診断精度を高めることが重要であることを強調しています。特に、頸椎のテストは比較的信頼性が高い一方で、肩甲骨や回旋筋腱板に関するテストの診断精度には限界があることがわかりました。臨床においては、患者の症状や病歴に基づいて適切なテストを選択し、診断精度を向上させることが必要です。
限界点
- 肩甲骨に関するテストの信頼性が低いため、他の診断方法との併用が必要。
- 一部のテストは感度や特異度が低く、単独での使用には限界がある。
- 全てのテストが一様に効果的ではなく、患者ごとの症状に応じた柔軟な対応が求められる。
読者が得られるポイント
- 頸椎、肩甲骨、回旋筋腱板の評価において、最も有効なテストの選択肢。
- 複数のテストを組み合わせて診断精度を高めるアプローチ。
- 肩関節の機能障害に対する新たな診断指針の重要性。
論文の詳細が気になる方、もっと詳しく知りたい方は、是非論文を一読ください。
論文情報
Hippensteel KJ, Brophy R, Smith MV, Wright RW. A Comprehensive Review of Physical Examination Tests of the Cervical Spine, Scapula, and Rotator Cuff. J Am Acad Orthop Surg. 2018;00:1-10.
DOI: 10.5435/JAAOS-D-17-00090.
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