(#29)片側肩痛患者における両側MRI所見の比較~診断と治療への影響~

文献
(#29)片側肩痛患者における両側MRI所見の比較~診断と治療への影響~
肩の痛みや機能障害に関わる医師、理学療法士、スポーツ医学の専門家。また、MRI所見と臨床症状の関連性を理解し、診断および治療方針の改善を目指す医療従事者に有用です。

 

博士

是非こんな方に読んでほしい

肩の痛みや機能障害に関わる医師、理学療法士、スポーツ医学の専門家。また、MRI所見と臨床症状の関連性を理解し、診断および治療方針の改善を目指す医療従事者に有用です。

 

論文内の肯定的な意見
  • MRIにより肩の病理学的な異常を高感度で検出でき、手術前の診断には有用である。
  • 両側の肩を評価することで、片側症状の患者における反対側の無症候性の異常も確認でき、包括的な診断が可能。

 

論文内の否定的な意見
  • MRI所見と症状との関連性が低く、画像所見に基づく診断や治療計画が過剰に依存される可能性がある。
  • 臨床所見と画像所見が一致しない場合が多く、MRIの使用が誤った診断につながる可能性がある。

 

論文の要約

Background

肩の痛みは多くの患者が経験する症状であり、診断にはMRIが広く用いられています。しかし、MRIで検出される異常が必ずしも痛みの原因であるとは限りません。本研究では、片側の肩に痛みを訴える患者の両側肩に対してMRIを実施し、無症状側と比較して症状との関連性を調査しました。

【過去の報告】
– MRIは、肩の軟部組織の病変を高感度で検出でき、手術前の診断において有用であると報告されています(Bradley MP et al.,2005)。
– 無症候性の肩においてもMRI所見で異常が確認されることがあり、その異常が症状とは無関係であることが示されています(Braman JP et al.,2014)。

 

Method

この研究は観察的研究として、肩痛を訴える123人の患者を対象に実施されました。対象者の平均年齢は39.4歳で、18歳から77歳までの範囲でした。すべての参加者は、無症候側の肩と痛みを感じる片側肩の両方について、T1、T2、およびプロトン密度(PD)シーケンスでMRI検査を受けました。MRI画像は無作為に割り当てられた肩専門医と筋骨格系放射線科医の2人によって独立して評価されました。

 

Results

両側の肩において、MRIによる異常所見の高い頻度が確認されました。肩峰下滑液包における異常や腱板病変が最も多く、無症状肩でも約90%でこれらの異常が見られました。特に、全層腱板断裂および肩関節症(OA)に関しては、症状側の肩でのみ有意に高い頻度が確認されました。また、肩専門医と放射線科医の所見の一致度は「軽度から中等度」(κ指数0.00〜0.51)とされました。

Conculusion

本研究では、片側の肩痛患者において、MRIで確認される異常所見が無症状側の肩にも同様に高頻度で存在することが確認されました。特に、全層腱板断裂および肩関節症のみが症状側で有意に多く見られましたが、他の異常所見は症状の有無にかかわらず確認されました。この結果から、MRIは病理学的な異常を正確に検出する能力があるものの、その異常が痛みや機能障害に関連しているかどうかは別問題であり、診断や治療計画において過度に依存すべきではないことが示唆されます。

 

博士

限界点

  • 本研究はMRI所見と症状との関連を1回の評価に基づいており、長期的な経過観察が行われていない。
  • 60歳以上の被験者のサンプルサイズが小さく、この年齢層での結果は十分に一般化できない可能性がある。

 

 

博士

読者が得られるポイント

  • MRI所見と臨床症状が必ずしも一致しないことへの理解。
  • 痛みや機能障害に基づく治療計画の重要性。
  • 無症候性肩における異常所見の解釈と過剰な診断・治療への警戒。

 

 

ブログの要約には間違いや個人的な解釈が含まれる可能性があります。
論文の詳細が気になる方、もっと詳しく知りたい方は、是非論文を一読ください。

論文情報
Barreto RPG, Braman JP, Ludewig PM, et al. Bilateral magnetic resonance imaging findings in individuals with unilateral shoulder pain. J Shoulder Elbow Surg. 2019.
DOI: 10.1016/j.jse.2019.04.001.

引用論文
Bradley MP, Tung G, Green A. Overutilization of shoulder magnetic resonance imaging as a diagnostic screening tool in patients with chronic shoulder pain. J Shoulder Elbow Surg. 2005;14:233-7.
DOI: 10.1016/j.jse.2004.08.002.

Braman JP, Zhao KD, Lawrence RL, et al. Shoulder impingement revisited: evolution of diagnostic understanding in orthopedic surgery and physical therapy. Med Biol Eng Comput. 2014;52:211-9.
DOI: 10.1007/s11517-013-1074-1.

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