是非こんな方に読んでほしい
肩の痛みを抱える患者を治療する整形外科医、理学療法士、スポーツ医学の専門家。また、肩の痛みの神経学的基盤や治療法に関心のある医療従事者にとって有用です。
- 肩関節の痛みの主な発生源である肩峰下滑液包や肩甲上神経、腋窩神経、外側胸筋神経の神経支配が詳しく述べられており、痛みの制御に役立つ情報が得られる。
- 選択的な肩関節部分の神経切断が痛み軽減に有効であると示唆され、臨床応用への可能性が高い。
- 全肩関節の神経切断は現実的ではなく、痛み軽減に焦点を当てた選択的な神経切断でも限界がある。
- 機械受容器の分布に関するデータが不足しており、運動機能への影響が考慮されていない部分がある。
Background
肩の痛み(PS)は、筋骨格系の中で最も一般的な訴えの一つであり、その診断と治療は医療費に大きな負担を与えています。肩の痛みの治療には、しばしば手術が用いられますが、肩関節の感覚神経支配に関する解剖学的な理解は不十分です。本研究の目的は、肩関節の感覚神経支配の特徴と神経枝(AB)の分布に関する文献をレビューし、選択的神経切断の可能性を評価することです。
– 肩関節を支配する神経枝として肩甲上神経と腋窩神経を報告(Gardner E.,1948)。
– 肩関節の肩峰下滑液包が最も高密度の疼痛受容体を持つことを発見(Ide K et al.,1996)。
Method
この文献レビューは、1945年から2019年までに発表された肩関節の感覚神経支配に関する研究を調査対象としました。主要な電子データベース(Ovid Medline、Embase、Scopusなど)を使用し、感覚受容器の分布と神経枝の位置についてのデータを抽出しました。検索結果として得られた876の研究のうち、基準を満たした35の研究を最終的にレビュー対象としました。
Results
肩関節の感覚神経支配は主に以下の4つの神経によって構成されています。
– 肩甲上神経(SSN):肩峰下滑液包や肩甲上腕靱帯を支配し、肩関節後部を主要に支配。
– 腋窩神経(AN):肩関節前部の関節包を支配し、腱板病変による痛みに関連。
– 外側胸筋神経(LPN):肩関節の前上部に位置し、関節包やサブアクロミアル滑液包を支配。
– 肩甲下神経(LSN):肩関節の前内側を支配。
肩峰下滑液包は最も高密度の疼痛受容体を持つ領域であり、肩甲上神経と腋窩神経の分岐によって支配されています。これにより、肩の痛みの発生源が広がり、選択的な神経切断による痛みの緩和が可能であることが示唆されました。
Conculusion
本研究では、肩関節の疼痛生成源として、肩峰下滑液包、肩甲上腕靱帯、長頭二頭筋腱が特定されました。これらの領域に焦点を当てた選択的神経切断が、肩の痛み軽減に効果的である可能性が示唆されています。今後の研究では、選択的神経切断が肩の痛みを軽減する一方で、運動機能を維持する方法の安全性と有効性を検証することが重要です。
限界点
- 機械受容器の分布に関するデータが不足しており、運動機能への影響に対するさらなる研究が必要。
- 肩の痛みが完全に解決されるわけではなく、部分的な痛みの軽減しか期待できない可能性がある。
読者が得られるポイント
- 肩の痛みの原因を特定するための神経支配に関する詳細な知識。
- 選択的神経切断による肩の痛み軽減の可能性。
- 肩の痛みに対する神経学的アプローチの新たな治療方法の理解。
論文の詳細が気になる方、もっと詳しく知りたい方は、是非論文を一読ください。
論文情報
Laumonerie P, Dalmas Y, Tibbo ME, Robert S, Faruch M, Chaynes P, Bonnevialle N, Mansat P. Sensory innervation of the human shoulder joint: the three bridges to break. J Shoulder Elbow Surg. 2020.
DOI:10.1016/j.jse.2020.07.017引用論文
Gardner E. The innervation of the shoulder joint. Anat Rec. 1948; 102:1–18.
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