(#38)青年期における脊柱の矢状面胸腰骨盤アライメントの分類と腰痛との関連

バイオメカニクス
(#38)青年期における脊柱の矢状面胸腰骨盤アライメントの分類と腰痛との関連
この論文は、青少年の姿勢、脊柱アライメント、腰痛との関連性について関心のある整形外科医、理学療法士、姿勢に関連する研究者に向けて有用です。また、成長期の姿勢の改善に取り組む教育者や保護者にも参考になります。

 

博士

是非こんな方に読んでほしい

この論文は、青少年の姿勢、脊柱アライメント、腰痛との関連性について関心のある整形外科医、理学療法士、姿勢に関連する研究者に向けて有用です。また、成長期の姿勢の改善に取り組む教育者や保護者にも参考になります。

 

論文内の肯定的な意見
  • 矢状面での胸腰骨盤アライメントを分類することで、腰痛との関連が特定されました。
  • 写真評価に基づいた姿勢分類が、放射線写真による分類と高い一致を示しました。

 

論文内の否定的な意見
  • 単一の姿勢測定だけでは、腰痛との一貫した関連性が見られなかった。
  • 非中立姿勢が腰痛に影響を与える可能性があるが、詳細なメカニズムは明確にされていない。

 

論文の要約

Background

これまで、臨床では異なる姿勢分類が腰痛と関連しているとされていますが、青年期における脊柱の矢状面アライメントに関する大規模な研究は限られています。従来の放射線写真を用いた研究では、脊柱と骨盤のアライメントにより4つの姿勢タイプが分類されてきました。しかし、放射線を使用する評価は大規模な研究には適していないため、非侵襲的な写真評価による分類が求められていました。

 

【過去の報告】
・矢状面での脊柱アライメントと腰痛の関連性
矢状面での脊柱アライメントが腰痛と関連しているという臨床報告が長年にわたって行われてきました(引用文献1-5)。

・姿勢矯正による腰痛の改善
腰痛の管理において、姿勢矯正が有効であることが示されています。特定の腰痛障害に対しては、姿勢を改善する治療法が有効であるとされています 。

・異なる姿勢と腰痛の関連性
成人における姿勢と腰痛の関連性について、異なる研究結果が報告されています。腰痛は、増加した脊柱前弯や骨盤傾斜の増加と関連しているとされています(引用文献6-10)。一方で、腰痛は脊柱前弯の減少や骨盤傾斜の減少とも関連していると報告されています(引用文献11-13)。

 

Method

本研究は、766名の平均年齢14歳の青年を対象に、後反射マーカーを用いた写真評価で胸腰骨盤アライメントを測定しました。姿勢は3つの角度(sway角、trunk角、lumbar角)を基に4つの姿勢クラスタに分類され、クラスタ分析により姿勢サブタイプが決定されました。また、対象者には腰痛に関する質問票が実施され、姿勢クラスタと腰痛との関連がロジスティック回帰分析により評価されました。

 

Results

姿勢は4つのクラスタに分類され、それぞれの特徴は以下の通りです

クラスタA(Neutral姿勢)
– Sway角: 平均0.22°
– Trunk角: 平均-0.84°
– Lumbar角: 平均-0.62°
– 腰痛の有病率: 37.4%(基準値)

クラスタB(Sway姿勢)
– Sway角: 平均-0.95°
– Trunk角: 平均0.51°
– Lumbar角: 平均0.72°
– 腰痛の有病率: 52.3%(P = 0.003)

クラスタC(Hyperlordotic姿勢)
– Sway角: 平均-0.13°
– Trunk角: 平均0.95°
– Lumbar角: 平均-0.86°
– 腰痛の有病率: 49.7%(P = 0.066)

クラスタD(Flat姿勢)
– Sway角: 平均0.91°
– Trunk角: 平均-0.40°
– Lumbar角: 平均0.80°
– 腰痛の有病率: 50.0%(P = 0.006)

姿勢がNeutral(中立)に分類された青年は、腰痛のリスクが最も低いことが示されました。一方で、SwayおよびFlat姿勢の青年は、腰痛発生リスクが有意に高くなりました。

 

Conculusion

この研究により、青年期における胸腰骨盤アライメントの姿勢分類が腰痛と関連していることが明らかになりました。特に、中立的な姿勢を持つ青年は腰痛のリスクが低い一方で、非中立的な姿勢(SwayおよびFlat)は腰痛リスクを高めることが示されました。姿勢の改善により腰痛予防が期待され、今後の治療においても姿勢評価が重要な役割を果たす可能性があります。

 

一方で…

【腰痛と姿勢を関連付けるエビデンスに関する否定的な見解】
本研究では、3つの単一姿勢指標(Sway角、Trunk角、Lumbar角)を切り離して個別に評価した場合、腰痛との一貫した関連性は認められませんでした。これにより、単一の姿勢指標では腰痛との明確な関連性を見出すことが難しいことが示されています。むしろ、複数の姿勢指標が相互に作用することで、腰痛が発生する可能性があるため、姿勢評価には複数の要素を総合的に考慮する必要があると結論づけられます(引用文献14:Vedantam R et al.,1998)。

この見解は、腰痛と姿勢の関連を単純に一つの要素に依存させるのではなく、姿勢全体のバランスや他の要因も含めた多角的なアプローチが重要であることを示しています。

 

 

博士

限界点

  • 写真による2次元の姿勢評価には、放射線写真と比べて限界がある。
  • 青少年に限った研究であり、成人への外挿は慎重に行う必要がある。
  • 長期的な追跡調査が必要である。

 

博士

読者が得られるポイント

  • 姿勢と腰痛の関連を理解し、姿勢改善の重要性を再確認できる。
  • 青年期の姿勢は、腰痛の予防および管理において重要な指標となる。

 

 

ブログの要約には間違いや個人的な解釈が含まれる可能性があります。
論文の詳細が気になる方、もっと詳しく知りたい方は、是非論文を一読ください。

論文情報
Smith A, O’Sullivan P, Straker L. Classification of sagittal thoraco-lumbo-pelvic alignment of the adolescent spine in standing and its relationship to low back pain. Spine. 2008;33(19):2101-2107.
DOI: 10.1097/BRS.0b013e31817ec3b0

引用論文
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2. Kendall FP, McCreary EK, Provance PG. Muscles: Testing and Function, With Posture and Pain. 4th ed. Baltimore: Williams & Wilkins; 1993.

3. Sahrmann SA. Diagnosis and Treatment of Movement Impairment Syndromes. Missouri: Mosby, Inc; 2002.

4. McKenzie RA. The Lumbar Spine: Mechanical Diagnosis and Therapy. Waikanae, NZ: Spinal Publications; 1981.

5. Robinson MG. The McKenzie method of spinal pain management. In: Boyling JD, Palastanga N, Jull GA, et al, eds. Grieve’s Modern Manual Therapy: The Vertebral Column. 2nd ed. Singapore: Churchill Livingstone; 1994:753–769.

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9. Harrison DD, Cailliet R, Janik TJ, et al. Elliptical modeling of the sagittal lumbar lordosis and segmental rotational angles as a method to discriminate between normal and low back pain subjects. J Spinal Disord. 1998;11:430-439.

10. Dankaerts W, O’Sullivan P, Burnett A, et al. Differences in sitting postures are associated with nonspecific chronic low back pain disorders when patients are subclassified. Spine. 2006;31:698-704.

11. Harrison DD, Cailliet R, Janik TJ, et al. Elliptical modeling of the sagittal lumbar lordosis and segmental rotational angles as a method to discriminate between normal and low back pain subjects. J Spinal Disord. 1998;11:430-439.

12. Dankaerts W, O’Sullivan P, Burnett A, et al. Differences in sitting postures are associated with nonspecific chronic low back pain disorders when patients are subclassified. Spine. 2006;31:698-704.

13. Jackson RP, McManus AC. Radiographic analysis of sagittal plane alignment and balance in standing volunteers and patients with low back pain matched for age, sex, and size. Spine. 1994;19:1611-1618.

14.Vedantam R, Lenke LG, Keeney JA, et al. Comparison of standing sagittal
spinal alignment in asymptomatic adolescents and adults. Spine 1998;23:
211–15.

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