(#50)腱板修復術における年齢と断裂サイズの検討

文献

 

 

博士

是非こんな方に読んでほしい

この論文は、肩関節の腱板修復術に関心がある整形外科医、リハビリテーション専門家、理学療法士に向けられています。特に、年齢や断裂サイズが腱板修復術後の成績に与える影響について理解を深めたい医療従事者にとって有益です。また、腱板損傷の治療計画を立てる上で年齢や損傷の重症度を考慮する必要がある臨床医にも有用です。

 

 

論文内の肯定的な意見
  • 年齢に関係なく、腱板修復術後において疼痛の改善が良好であった。
  • 若年層では術後の可動域が大きく改善し、高齢者でも手術の効果が見られた。
  • 腱板断裂の幅が広い症例でも、術後の外転筋力や耐久力は改善が見られた。

 

論文内の肯定的な意見
  • 腱板断裂の幅が広い症例では、術後の可動域が小さく、JOAスコアが低い。
  • 高齢者の術後成績は若年層に比べて若干劣る。

 

論文の要約

Background

腱板断裂は肩関節の機能障害を引き起こすことが多く、その治療として腱板修復術が行われます。しかし、年齢や断裂のサイズが術後の結果にどのように影響するかについては十分に解明されていません。この研究は、腱板修復術の術後成績に年齢と断裂サイズがどのように影響するかを検討することを目的としています(Cofield RH et al.,1985;Harryman DT et al.,1991)。

 

【過去の報告】
回旋腱板損傷の治療に関するレビューでは、年齢や断裂の大きさが術後の成績に影響を与えることが示されている。特に、大きな断裂や年齢が高い患者では術後の可動域や筋力回復が制限される傾向があると報告されている。(Cofield RH, 1985)。腱板修復術の成績は、腱板の断裂が完全に修復されたかどうかが重要である。特に、大きな断裂を持つ患者では、術後の肩関節の機能や筋力に影響を与えることが確認されている。(Harryman DT et al., 1991)。

 

Method

・対象
平均年齢57歳(28~81歳)の98例100肩を対象とし、腱板修復術を行いました。対象者は年齢に基づいて4つのグループに分けられ、術後の可動域やJOAスコアが評価されました。平均追跡期間は34か月です。

・評価基準
術中に断裂のサイズ(幅と長さ)を測定し、術前後の肩関節の可動域、疼痛、外転筋力、JOAスコアを評価しました。また、断裂の幅が4cm以上と未満の2群に分けて成績を比較しました。

 

Results

・断裂サイズと年齢
年齢が高いほど断裂のサイズが大きくなる傾向が確認されました。70歳以上のグループでは、平均断裂幅が3.5cm、長さが3.1cmと最も大きく、50歳未満のグループではそれぞれ2.4cm、2.2cmでした。

・可動域の改善
全てのグループで術後に肩の可動域が改善しました。特に挙上角度では、50歳未満のグループで131°から152.5°、70歳以上のグループでは113.6°から130°に改善しました(P < 0.05)。しかし、外旋角度に関しては、年齢が高いほど術前に制限が見られ、術後もその差が残る結果となりました。70歳以上のグループで術前53.8°から術後40°に減少し、50歳未満のグループでは術前62.6°から術後53.4°に減少しました。

・JOAスコア
JOAスコアは、70歳以上のグループで術前56.8点から術後82点に改善しましたが、他の年齢グループと比較して改善度が低くなっていました。60~69歳のグループでは、術前61.5点から術後93.6点と最も大きな改善を示しました(P < 0.05)。

・断裂サイズの影響
断裂幅が4cm以上のグループは、4cm未満のグループと比較して術前後ともに可動域が小さく、JOAスコアも低い結果を示しました。術後の挙上角度は4cm未満のグループで152.5°に対し、4cm以上のグループでは130°に留まりました。また、JOAスコアは4cm未満で93.4点、4cm以上で87.3点でした(P < 0.05)。

 

 

Conculusion

年齢が高いと腱板断裂のサイズが大きくなり、その結果、術後の可動域やJOAスコアが低くなる傾向があります。しかし、疼痛の改善は全ての年齢層で見られ、特に高齢者でも疼痛の軽減が良好であることが確認されました。術後の可動域改善には限界があるものの、腱板修復術は高齢者にも適応可能であり、適切な手術計画が重要です。

 

 

博士

限界点

  • 高齢者では術後の可動域が若干制限される。
  • 断裂の幅が大きい症例では、可動域とJOAスコアの改善が小さい。

 

博士

読者が得られるポイント

  • 年齢と断裂サイズが腱板修復術後の成績に影響を与える。
  • 断裂幅が広い場合、可動域の改善が制限されることが多い。
  • 全ての年齢層で疼痛の改善が確認され、手術の適応が広い。

 

 

 

ブログの要約には間違いや個人的な解釈が含まれる可能性があります。
論文の詳細が気になる方、もっと詳しく知りたい方は、是非論文を一読ください。

論文情報
Shibata Y, Midorikawa K, Naito M. Repair of the rotator cuff tear in relation to age and its size. The Shoulder Joint. 2000;24(3):489-496.

引用文献
Cofield RH. Current concepts review. Rotator cuff disease of the shoulder. J Bone and Joint Surg. 1985; 67-A:974-979.

Harryman DT II, Mack LA, Wang KY, Jackins SE, Richardson ML, Matsen FA III. Repair of the rotator cuff. Correlation of functional results with integrity of the cuff. J Bone and Joint Surg. 1991; 73-A:982-989.

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