(#45)肩峰下インピンジメント症候群における肩甲骨援助テストが肩甲骨の位置と肩峰下空間を変化させるが、回旋筋腱の強度には影響しない

文献
(#45)肩峰下インピンジメント症候群における肩甲骨援助テストが肩甲骨の位置と肩峰下空間を変化させるが、回旋筋腱の強度には影響しない
この記事は、肩の痛みや機能障害、特に肩峰下インピンジメント症候群(SAIS)に関連する治療法を探している理学療法士、整形外科医、スポーツ医療従事者に向けています。肩の動作や肩甲骨の運動に関する理解を深めたい専門家、または肩関節のリハビリテーションを支援する医療従事者に役立つ情報です。

 

博士

是非こんな方に読んでほしい

この記事は、肩の痛みや機能障害、特に肩峰下インピンジメント症候群(SAIS)に関連する治療法を探している理学療法士、整形外科医、スポーツ医療従事者に向けています。肩の動作や肩甲骨の運動に関する理解を深めたい専門家、または肩関節のリハビリテーションを支援する医療従事者に役立つ情報です。

 

論文内の肯定的な意見

SAIS患者に対する肩甲骨援助テスト(SAT)の効果
肩甲骨援助テストは、肩甲骨の上方回旋と後傾を促し、肩峰下空間を広げる可能性があると示唆されています。

臨床的意義
SATは、特定の患者群を特定し、肩峰下空間の狭小化が原因である場合、治療法の選択に役立つ可能性がある。

 

論文内の肯定的な意見

肩回旋筋腱の強度には影響なし
SATは肩峰下空間や肩甲骨の位置に影響を与えるものの、肩回旋筋腱の強度を改善することはありませんでした。

SAIS患者と健康な対象者の違いが少ない
SATの影響は、SAIS患者と健康な人の間で大きな違いを示さず、全体的な効果は限られていると考えられます。

 

論文の要約

Background

肩峰下インピンジメント症候群(SAIS)は、腕の挙上時に肩甲骨の動きが不十分であることが原因となり、肩峰下腔間が狭まり回旋筋腱板腱に圧迫を引き起こすことが知られています。先行研究では、肩甲骨の上方回旋、後傾、外旋の減少が、肩の痛みや機能障害と関連しているとされています (Poppen NK & Walker PS, 1976; Howell SM et al., 1988)。

 

【過去の報告】
肩の挙上中に肩甲骨の上方回旋と後傾が正常な肩の動作に重要であることを報告(Poppen NK & Walker PS.,1976)。

肩峰下インピンジメント症候群(SAIS)患者は、健康な被験者と比較して肩甲骨の後傾、上方回旋、外旋が減少していることを報告(Howell SM et al.,1988)。

肩甲骨の動きが不十分な場合、肩回旋筋腱が肩峰下で圧迫されるリスクがあることを示唆(Howell SM et al.,1988)。

肩峰下腔間の狭小化が肩回旋筋腱の圧迫に関連していることを報告(Howell SM et al.,1988)。

 

Method

対象
42名の被験者(SAIS患者21名、健康な対照21名)が参加しました。

測定
肩甲骨の3次元運動解析、超音波を用いた肩峰下空間の計測、肩の等尺性強度の測定が行われました。

介入
被験者の腕を45度および90度まで挙上させた状態で、肩甲骨援助テスト(SAT)が実施され、肩甲骨の位置や肩峰下空間への影響が評価されました。

 

Results

肩甲骨の上方回旋
– 45度の挙上:SATを実施した際、肩甲骨の上方回旋が 6.3 ± 3.6度 増加しました。
– 90度の挙上:SATを実施した際の増加は 2.3 ± 3.8度 に留まりました。
– 静止状態(休息時):SATによって肩甲骨の上方回旋が 8.9 ± 4.7度 増加しました。

肩甲骨の後傾
– 45度の挙上:SATによって肩甲骨の後傾が 4.9 ± 2.2度 増加しました。
– 90度の挙上:SAT実施後の後傾の増加は 5.1 ± 2.4度 で、各角度で後傾が改善されました。

肩峰下腔間(肩峰骨頭間距離)
– 45度の挙上:SATにより肩峰下腔間が 2.1 ± 1.1 mm 増加しました。
– 90度の挙上:肩峰下腔間が 1.7 ± 1.4 mm 拡大しました。
– 静止状態(休息時):SATによって肩峰下腔間は 0.8 ± 0.9 mm 増加しましたが、他の角度と比較して小さな変化でした。

肩の等尺性強度
– SATは肩甲骨の動きに影響を与えるものの、肩回旋筋腱の等尺性強度に対して有意な変化は見られませんでした。

– 外旋トルク:SAT実施前後での外旋トルクの差はほぼ見られず、0.00 ± 0.03 Nm/kg の変化。
– 挙上トルク:SATによる肩挙上時のトルクも変化が見られず、0.00 ± 0.06 Nm/kg でした。

 

 

Conculusion

肩甲骨援助テスト(SAT)は、肩峰下インピンジメント症候群(SAIS)患者および健康な被験者の両方で、肩甲骨の後傾と上方回旋、肩峰下腔間を増加させることが示されました。しかしながら、回旋筋腱の強度には影響を与えず、特にSAIS患者での効果は限られていると考えられます。臨床的には、SATが肩峰下腔間の狭小化を特定するための評価ツールとして有用である可能性がありますが、動的な状況での効果や痛みへの影響についてはさらなる研究が必要です。

肩甲骨の動きに関する改善
肩甲骨援助テスト(SAT)は、肩甲骨の上方回旋と後傾を改善し、肩峰下腔間を拡大する効果があることが確認されました。特に45度の腕挙上時に最大の効果が見られ、肩峰下腔間が 2.1 mm 増加しました。

回旋筋腱の強度には影響なし
SATは肩甲骨の動きに影響を与えるものの、肩回旋筋腱の等尺性強度にはほとんど影響がないことがわかりました。外旋および肩の挙上トルクには統計的に有意な変化は見られませんでした。

臨床的意義
SATは、肩峰下インピンジメント症候群(SAIS)患者に対する評価と治療の指針として利用できる可能性があります。肩峰下腔間の狭小化が疑われる患者に対して、SATを用いて肩甲骨の動きを調整することで、肩の痛みを軽減できる可能性があります。しかし、動的な動作での効果や痛みへの影響については、さらなる研究が必要です。

 

 

博士

限界点

  • この研究は静的な腕挙上状態でのみ評価されており、動的な動作におけるSATの効果は明確ではありません。
  • 測定には皮膚の動きによる誤差が含まれる可能性があり、完全な再現性には限界がある。

 

博士

読者が得られるポイント

  • 肩峰下インピンジメント症候群の評価や治療に役立つ。
  • 肩甲骨の動きや肩峰下腔間の狭小化に対する理解を深める。
  • SATは、肩甲骨の位置を調整し、肩の動きの改善に寄与する可能性がある。

 

 

 

ブログの要約には間違いや個人的な解釈が含まれる可能性があります。
論文の詳細が気になる方、もっと詳しく知りたい方は、是非論文を一読ください。

論文情報
Seitz AL, McClure PW, Finucane SF, Ketchum JM, Walsworth MK, Boardman ND, Michener LA. The scapular assistance test results in changes in scapular position and subacromial space but not rotator cuff strength in subacromial impingement. J Orthop Sports Phys Ther. 2012;42(5):400-412.
DOI: 10.2519/jospt.2012.3579

引用文献
Poppen NK, Walker PS. Normal and abnormal motion of the shoulder. J Bone Joint Surg Am. 1976;58(2):195-201.

Howell SM, Galinat BJ, Renzi AJ, Marone PJ. Normal and abnormal mechanics of the glenohumeral joint in the horizontal plane. J Bone Joint Surg Am. 1988;70(2):227-232.

Flatow EL, Soslowsky LJ, Ticker JB, et al. Excursion of the rotator cuff under the acromion. Am J Sports Med. 1994;22(5):779-788.

Graichen H, Bonel H, Stammberger T, et al. Three-dimensional analysis of the width of the subacromial space in healthy subjects and patients with impingement syndrome. AJR Am J Roentgenol. 1999;172(4):1081-1086.

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