(#51)部分断裂した回旋腱板の管理~診断から治療まで~

文献

 

 

博士

是非こんな方に読んでほしい

この論文は、肩関節の部分断裂した回旋腱板の診断と治療に関心がある医師、特に整形外科医やリハビリテーション専門家に向けたものです。部分断裂に対する最新の治療法や管理戦略に興味がある医療従事者に有用です。特に、若年アスリートや高齢者の回旋腱板断裂に対する治療法の選択肢を検討している方に役立ちます。

 

 

論文内の肯定的な意見
  • 部分断裂の回旋腱板は、診断が困難であるにもかかわらず、管理すれば予後が良好である。
  • 保守的な治療が部分断裂の初期段階では効果的である場合が多い。
  • 関節鏡視下のアクロミオプラスティ(肩峰形成術)やデブリードマン(壊死組織の除去)は、有効な治療法として広く利用されている。

 

論文内の肯定的な意見
  • 診断が難しいため、適切な治療法を選択するための正確なイメージングが不可欠である。
  • 部分断裂が進行して全断裂に至る可能性があり、予防的な治療の判断が難しい。

 

 

論文の要約

Background

回旋腱板の部分断裂は、肩関節の痛みや障害の主な原因の一つです。これらの断裂は、腱板全体の厚さの一部が損傷するため、診断が難しく、多くの場合、MRIや関節鏡でのみ確認されます。部分断裂は、若いアスリートや高齢者に多く見られ、それぞれ異なる病因と治療戦略を必要とします(Yamanaka K, Fukuda H., 1987;Loehr JF, Uhthoff HK., 1987)。

 

【過去の報告】
回旋腱板の部分断裂に関する調査では、249の肩関節標本のうち、部分断裂は13%の発生率で、その内訳は滑液包側2.4%、腱内7.2%、関節面側3.6%と報告されています。(Yamanaka K et al.,1987)306例の肩関節を調査し、部分断裂は32%、全断裂は19%の発生率であったことが報告され、断裂が進行して全断裂に移行するリスクが指摘されています。断裂の深さと肩の機能障害には強い関連性があることが確認されました。(Loehr JF et al.,1987)肩インピンジメントが回旋腱板の部分断裂を引き起こす主な要因であるとし、インピンジメントの治療が部分断裂の進行を防ぐために重要であると報告しています。(Neer CS.,1983)

関節鏡を使用した治療が部分断裂の効果的なアプローチであり、特にアクロミオプラスティ(肩峰形成術)とデブリードマン(壊死組織の除去)が高い治療効果を示すことが報告されています。(Ellman H.,1990)

 

Method

・診断と分類
部分断裂は、関節面側断裂、腱内断裂、滑液包側断裂の3種類に分類されます。診断にはMRIや関節鏡が用いられますが、いずれも精度に限界があります。関節鏡での診断精度は、関節面側断裂や滑液包側断裂で高いものの、腱内断裂の診断は困難です。

・治療法
部分断裂に対する治療には、保存的治療と手術治療があります。保存的治療は、痛みの軽減や炎症の抑制を目的とし、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)、リハビリテーション、場合によってはステロイド注射が用いられます。手術治療では、関節鏡視下アクロミオプラスティ(肩峰形成術)やデブリードマン(壊死組織の除去)が行われ、腱板の修復が必要な場合もあります。

 

Results

・治療結果
保存的治療は、特に初期の部分断裂では効果的であるとされていますが、深部の断裂や症状が進行した場合には手術が推奨されます。関節鏡視下アクロミオプラスティ(肩峰形成術)やデブリードマン(壊死組織の除去)を行った患者の治療結果は概ね良好で、満足度は50%から95%に達しました(Neer CS., 1983;Fukuda H., 1996;Wright SA., 1996)。

・部分断裂の予後
保存的治療を受けた患者の80%は断裂が進行し、全断裂に移行することが確認されています(Yamanaka K., 1994)。一方、手術治療を行った患者の94%は、アクロミオプラスティ(肩峰形成術)と腱板修復の併用により良好な結果を得ました(Fukuda H., 1996)。

・治療法別の成功率
部分断裂した回旋腱板に対する治療では、保存的治療と手術治療の両方が選択肢となります。保存的治療では、患者の50~87%で症状の改善が見られましたが、症状が進行する場合も少なくありません。手術治療、特に関節鏡視下のアクロミオプラスティ(肩峰形成術)とデブリードマン(壊死組織の除去)の併用は、成功率が94%に達しました。

・手術結果
関節鏡視下でのアクロミオプラスティ(肩峰形成術)とデブリードマン(壊死組織の除去)は、部分断裂の患者において良好な結果を示しました。術後の肩関節機能の回復と痛みの軽減が報告され、術後6か月での満足度は82~95%に達しました。進行した断裂に対しても、手術後の機能改善が確認されました。

・保存的治療の成績
初期の部分断裂に対する保存的治療では、約80%の患者で疼痛の軽減が見られましたが、一部の患者では断裂が全厚断裂に進行しました(Yamanaka K., 1994)。

 

Conculusion

部分断裂した回旋腱板の治療は、保存的治療と手術治療の選択肢が存在します。断裂の位置や深さ、患者の年齢や活動レベルに基づいて選択されます。初期段階で有効である一方で、症状が進行するリスクがあるため、断裂の進行度や患者の状態に応じて手術治療が推奨される場合があります。保存的治療が効果を示す場合もありますが、多くの症例では手術治療が推奨されます。特に、腱板修復やアクロミオプラスティ(肩峰形成術)を併用した手術は、高い成功率を示しており、患者の生活の質を向上させる重要な手法です。

 

 

博士

限界点

  • 診断に使用される画像診断の精度が限られており、腱内断裂の検出が困難。
  • 保存的治療と手術治療の選択基準が明確でないため、臨床的判断が必要。

 

博士

読者が得られるポイント

  • 部分断裂は、肩関節の機能に重大な影響を与える可能性があり、早期の診断と治療が重要。
  • 関節鏡視下の治療は、部分断裂に対する効果的な治療法として広く用いられている。
  • 保存的治療で改善しない場合や症状が進行する場合には、手術治療が推奨される。

 

 

ブログの要約には間違いや個人的な解釈が含まれる可能性があります。
論文の詳細が気になる方、もっと詳しく知りたい方は、是非論文を一読ください。

論文情報
Fukuda H. The management of partial-thickness tears of the rotator cuff. J Bone Joint Surg Br. 2003;85-B:3-11.
DOI: 10.1302/0301-620X.85B1.13846

引用論文
Yamanaka K, Fukuda H. Pathological studies of the supraspinatus tendon with reference to incomplete thickness tears. J Bone Joint Surg Br. 1987;69:557-560.

Loehr JF, Uhthoff HK. The pathogenesis of degenerative rotator cuff tears. Orthop Trans. 1987;11:237.

Neer CS II. Impingement lesions. Clin Orthop Relat Res. 1983;173:70-77.

Ellman H. Diagnosis and treatment of incomplete rotator cuff tears. Clin Orthop Relat Res. 1990;254:64-74.

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