仙腸関節(SI関節)の疼痛と関連する臨床所見の中で、最も強い関連性が認められたのは、「3つ以上の陽性の仙腸関節痛誘発テスト」。
この関連性の強さを示す具体的な数値は以下の通りです。
- 非常に強い関連性: オッズ比に基づくと、この関連性は「非常に強い」と評価されました。
- オッズ比と蓋然性: 診断用注射によってSI関節由来の疼痛であると特定された場合、臨床所見として「3つ以上の陽性のSI関節痛誘発テスト」が存在するオッズ比は 27.9 でした(95%信頼区間 5.4, 143.4)。
これは、3つ以上の陽性のテストが存在する場合、SI関節由来の疼痛源が存在する可能性が
約28倍になることを示しています。 - 効果量: 3つ以上の陽性のSI関節痛誘発テストとSI関節の診断用注射の結果を比較した際のファイ係数(Phi coefficient)は .6 であり、その効果量(分散説明率)は 36% でした。
この研究では、「3つ以上の陽性の仙腸関節痛誘発テスト」以外にも、SI関節痛と有意な関連が見られた臨床所見が特定されました。
仙腸関節痛の陽性注射と有意な関連があったのは、以下の4つの特徴です。
- 3つ以上の陽性のSI関節痛誘発テスト (PPTs)。
- 座位から立ち上がる際の疼痛 (pain when rising from sitting)。
- 片側性の疼痛 (unilateral pain)。
- 腰部正中線の疼痛の欠如 (absence of midline lumbar pain)。
特に、「座位から立ち上がる際の疼痛」については、陽性のSI関節注射を受けた全ての患者が、座位から立ち上がる際に疼痛を訴えたことが注目されます。そのため、この特徴についてはオッズ比の計算は行えませんでした。
また、「片側性の疼痛」についても、オッズ比3.4で「かなり強い関連性」が見られました。
逆に、「正中線の腰部疼痛の存在」は、陽性のSI関節注射との間に負の関連性が見られ、仙腸関節が疼痛源である可能性を除外する傾向があります。SI関節痛を持つ患者は、L5棘突起のレベルまたはそれ以上のレベルに疼痛を訴えることは稀でした。
この研究で使用されたSI関節の疼痛誘発テストには、以下のものが含まれます。
- Distraction test(開大テスト)
- Compression test(圧迫テスト)
- Sacral thrust test(仙骨推圧テスト)
- Thigh thrust test(大腿スラストテスト)
- Gaenslen’s test(ゲンスレンテスト/骨盤捻転テスト)
これらのテストを組み合わせて実施し、「3つ以上」が陽性であるかどうかが、診断の明確化に大きく役立つことが示されています。
この研究は、ルーチンの整形外科的検査や画像診断が腰痛の原因特定において限界を持つ中で、疼痛部位、病歴、および特定の身体検査所見(特に疼痛誘発テスト)を用いることが、慢性腰痛患者の臨床的分類を改善するための予備的な証拠を提供しています。臨床所見を利用してSI関節、椎間関節、または椎間板由来の疼痛源を特定することで、診断手順や治療介入をより正確に行える可能性があります。
仙腸関節由来の疼痛を特定する上で、「3つ以上の陽性の仙腸関節痛誘発テスト」は、
まるで特定の鍵穴にぴったり合う「マスターキーのセット」のように機能し、
この鍵(臨床所見)が揃うことで、疼痛の原因がその関節にある可能性を劇的に高める、と理解することができます。



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