Kuslichらの調査によると、
瘢痕組織( scar tissue / perineural fibrosis)の感度は、「組織そのものに痛みの感受性がない」
という観察事実が得られています。
瘢痕組織は「決して過敏ではなかった」
過去に椎弓切除術などを受けた患者の再手術において、神経の周囲には必ずある程度の「神経周囲の線維化(瘢痕組織)」が見られました。
しかし、この研究の直接的な刺激テストの結果、「瘢痕組織そのものは、決して過敏(痛みに敏感)ではなかった(The scar tissue itself was never tender)」と明記されています。
無感覚である理由は、組織自体に痛みを感じる神経終末が存在しないためであると考えられます。
瘢痕組織と神経根の対照的な反応
この研究の興味深い点は、瘢痕組織そのものと、その中にある神経根の感度が全く対照的だったことです。
- 瘢痕組織
刺激しても全く痛みを感じません。
- 神経根
瘢痕組織に包まれている神経根は、しばしば非常に敏感(frequently very sensitive)になっていました。
つまり、手術器具で触れた際に痛みを感じる場合、それは「しこり(瘢痕)」が痛んでいるのではなく、その中にある「過敏になった神経」が痛んでいるということになります。
瘢痕組織が痛みを引き起こす「本当の役割」
瘢痕組織自体は痛みの発生源ではありませんが、以下のメカニズムで痛みを悪化させることが示唆されています。
- 神経の固定
瘢痕組織は神経根を一定の位置に固定(癒着)してしまいます。
神経根は体の動きに合わせてある程度動くことができますが、瘢痕によって固定されると動けなくなります。
- 感受性の増加
固定された神経根は遊びがなくなるため、体の動きに伴う牽引や圧縮の影響を受けやすくなり、結果として神経根の感受性がさらに高まってしまいます。
- 痛みの増幅
この機械的なストレスに対して神経根がより脆弱(感受性が高い状態)になり、結果として坐骨神経痛が悪化したり、再発したりする要因となります。
結論
瘢痕組織には、「その組織自体に痛みを誘発する性質(過敏性)がなかった」という点が事実として重視されています。
一度手術を受けた後に再び痛みが出る場合の病態を理解する上で非常に重要であり、現代の治療においても、いかに神経周囲の癒着(瘢痕)を防ぎ、神経の可動性を確保するかが大きな課題となっています。



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